2022.03.23
あと9日
- 会話という名の体操
他者との会話に一体何の効果が期待できようか。本と対話を試みていたほうがよほど効率的ではないか。私は以前、このように述べたと思う。確かに、内容の持つ質という観点では本に勝るものはない。しかし、会話とは内容そのものに重きを置くものではない。かのもたらす最大のメリットは脳の体操である。
会話というのは、およそ多くの情報を瞬時に識別し、的確な信号を返すことが求められる。その処理には、無意識のうちに膨大なエネルギーと途方も無い思考を要する。これが脳を活性化させる。こういう原理であると私は思う。
独りで同様の効果は期待できるか。恐らく、難しい。自己との対話は一貫性を持って論理立てた思考を可能にする。会話では散逸しがちな話題ですらも、心ゆくまで追い求めることが出来る。が、これは思考を整理してしまう危険性すら有る。対話に必要な情報というのはどこからともなく投げつけられるのではなく、自身で探し、選別する必要が有る。その情報の動きというのは、どうにも緩慢にならざるを得ない。結果として、前述のような情報への即応能力は乏しくなってしまうように思われる。そして脳は陳腐化していく。
さて、活性化された脳は、あらゆる面で優れた効果を放つ。創作もその一つ。情報に対する適切かつ迅速な対応は、創作の場面においても、例えば文面の構成などに有用に働くであろう。故に会話は必要なのだ。本にのみ頼ることは有用な策と言えない。