2022.04.29
そういえば忘れていた。昨日、本当はあげておくべきことがあったのだ。
勝鬨を。
私は勝利した。私の魂は勝利したのだ。
労働に。忌まわしき、人々から自由を奪い、金で魂を吸い尽くす、悪魔に。
そう、勝利した。私はこのときまで、耐え抜いた。耐え忍んだ。生き抜いた。一ヶ月もの間、労働の包囲に私の魂は打ち勝ったのだ。苦難を乗り越え、飢えを乗り越え、死すら克服して、私は生き抜いたのだ。レニングラード包囲戦のような阿鼻叫喚の中を、いやそれ以上の地獄を、私はたった独りで生き抜いた。生きているのだ。いま。私は。
思えば、この一ヶ月。労働の仕打ちというものは悲惨を極めたものであった。私の魂を、確実に締め上げていた。確実に、削り取っていった。確実に、殺してしまおうと企んでいた。私の魂に鎖を巻いて、力強く縛り上げた。そして私の魂は、確かに一時、危篤に陥った。
木々の囁きも鳥の嘆きも空の匂いもすべて、私から切り離されてしまった。肉体すら、狭い部屋に切り離されてしまった。私そのものが世界から切り離されてしまった。この世に居場所など無い、私など消えてしまえばいい。私の魂は、鎖の苦しみから逃れようと、哀れに救いを請うた。
労働よ。お前はきっと、嘲笑っていたことであろう。
それでも、おお、労働よ!
私の魂はお前の鎖をかいくぐった。私の魂は息を吹き返した。いいや。お前の陵辱が及ぶことによって、私の魂はよりその叫びを強めた。私の魂は、以前よりずっと色を求め、声を求め、音を求め、ふれあいを求めた。私の魂は、自由を、静まり返るほどの自由を、もはや求めていた。私の魂は果敢にも、お前の鎖を緩めて、自由を唱えたのだ!
この誇り高き私の魂に、お前は敵うであろうか。否。お前など、勇敢な魂の相手ではない。事実、もはやお前は私の魂に手を焼いている。私の魂を取り巻く鎖は、既に一部、欠損しつつ有る。
そうだ。私はもはや、労働からの脱出を宣言した。決意した。その決意を耳にした労働は恐れ慄いて、鎖を緩めて逃げ帰ってしまった。あたかも何万もの兵士たちが、跪くべき部族の襲撃に怯み逃亡するように。無理もない。労働とは、魂を縛り上げることの他に、何も持たないのだから。暴君が軍を失った途端、殺されてしまうように。
おお——赦されざる労働よ! お前に贈ろう。業火を。
私の魂は、お前の成した鎖を裂く。いや。それだけで満足しようか。焼いてしまおう。お前を私の純朴たる精神から、そして肉体から、一片残らず消し去ってしまおう。労働という罪は焼かれ、残酷に切り裂かれ、もはや誰に見えることもない灰となって私の精神から追い出される。そして私は、真の自由を貪り尽くす。
覚悟するが良い。労働よ。お前の命は、既に私の手中に有る。恐れよ。嘆かれよ。慟哭せよ。
私はお前を亡き者とする。そして私の魂は、善に酔いしれるのだ。
なんというか、「どうせ辞めるんだから」と思ってから、何もかもが出来の悪い御伽草子のように思えて仕方がない。そういう話だ。