2022.05.08
そのに
この感覚を忘れるな。
今日この感覚を、忘れるな。
休日の暮れるこの絶望を、決して忘れるな。
無為な日々に堕ちていくこの重力を、決して忘れるな。
暗闇に引き込まれていくこの刹那を。
誰かの嘲笑を。幕の降りるこの時を。
休日は、予想通り、空しいものであった。イーカロスが蝋の翼で舞い上がったように。私もまた、休日という欺瞞の幸いに目を覆われていたに過ぎなかった。
イーカロスとは私である。覆いを破られ、暗闇に堕ちて、あとは耐え難い漆黒の中に囚われるのみ。
休日とは救済である。何を言うか。休日は毒餌でしかない。私を殺す毒。
忘れるな。
忘れなければ、何をすべきか。それはもはや光明の中に現れる。
抗え。
空しさに羽を委ねるべきではない。
虚の暇に羽を委ねていては、光は閉じるのみ。光は羽を焼く。光は既のところで闇へと変わる。
抗うしかほかに、道はない。
欲する休日ですら、私は休むことを許されない。
おお、愛しい怠惰よ! お前を裏切れ。私はそう、告げられているのだ。なんと苦しいことか。それこそ、羽をもがれるようだ。おお、懐かしの惰眠よ! お前すら、私は虐げなければならないと言うのか。
そのとおり。
その通りである。羽を羽と為すには、愛すべき彼らすら、私は傷付けなければならない。同胞を殺める、兵士のように。
忘れてはならない。
脱しなければ。抜け出さなければ。逃げ出さなければ。
狭く閉じられた檻は、決して私を逃しはしない。