2022.05.12
そのに
やっぱり私は怖いんだ。
私は怖い。労働が怖い。労働に染められていくのを、感じているから。
労働で必要な知識が、次々と脳内に書き込まれていく。何の興味もない知識が、ただ金を稼ぐためだけに必要な知識が、私の脳内を圧迫する。腐った記憶が、脳のフィルムに収められる。そして私の脳の容量は小さい。次々と押し出されていく。何が。
美しい記憶。美しい知識。この二年間で培った、蓄えた、優雅な世界。繊細な描写。あるいは学生時代のどうしようもない会話。それらが、次々と、失われていく。いや、もう既に失われつつある。
嫌だ。あの楽しかった思い出たちが。創作意欲掻き立てる華麗な言葉たちが。私の元を去っていく。労働に殺されていく。
いやだ。怖い。さびしい。置いていかないで。
いやだ。
ああ、悟ってしまった。
どうやら冬まで持ちそうにない。労働に置き換えられてしまうその前に、私はきっと逃げ出してしまうだろう。
労働に書き換えられたら、それはもう、ほんとうに死んでしまったことになる。