2022.07.06
普通に生きてみたかった。
普通に生きてみたかったのだ、ほんとうは。普通に働いて、普通に恋をして、普通に結婚して、普通に家庭を築く。いつの日か子供ができて、孫ができて、孫の成長を見ながら、普通に生きて、普通に死ぬ。
家族。孫。妻。出世。そういう、ありきたりで平凡な普通の生活。さりげない幸いに満ちた人生。私も、普通に生きてみたかった。
叶わない。もはや不可能なのだ。これまでの生育環境からして「普通」に対する価値観は歪んでしまっているし、それに何より、あまりに孤独が長すぎた。もはや人に頼ること、人と共にいること、それそのものを忘れてしまった。働くことも、単なる拷問に思えてならない。私はここにいるべきではない、そんなことを思ってしまう。私の居場所など、どこにもないのに。
残念だ。もう私は普通に戻れない。少なくとも、生まれた時点で普通からの離脱は決定付けられている。普通でない者、そして何ら価値のない者が現代において進む道は、たった一つしかない。破滅である。
恐らく、私の嘆きを聞くものの大半が思うだろう。「この者はいつ決断をするのか」と。「いつ嘆きから逃れるのであろうか」と。答えよう。その時はまさに迫っている。
私は辞世を作ってしまったのだから。