2022.09.09
惜しいことに女王陛下が崩御あらせられた。しかし私は女王陛下の今後を祈ることなど出来ない。国教会の者ではないのだから。
それに、私が祈るまでもなく、主は女王陛下を救われるだろう。主は貴方のしもべを救われる。
ああ、異教徒がこんなことを言ったら、矢張り根絶やしにされてしまうだろうか。
- 冬の季節
春秋優劣論が至るところで繰り広げられている。その議論は識者に委ねるとして、私はそのどちらをも優越するものがあると考える。それは冬である。
冬は何が素晴らしいか。言うまでもなく、静寂にある。
春は鶯が五月蝿い。
夏は色が煩わしい。
秋は趣が鬱陶しい。
このような状態において、冬だけは、あらゆる観点で静寂を担保されている。草木は枯れ果て、生命は死に絶え、ないし眠り続ける。僅かな鳥の囀りの他に聴こえるものは何もない。誰も自らを押し付けがましく彩らない。冬に限って世界は、真に私だけを認める。
故に私は冬が好きだ。冬にだけ、私は私で居られるのだから。
こんな、救いようのない重陽の節句だからこそ、私は冬に焦がれてしまうのであった。
欲を言えば、人間という年中騒々しい生物を遠ざけてしまいたい。人間さえ消えて仕舞えば、冬は静寂を湛えたまま、永久に私と共に在るだろう。