2022.10.08
- バイブルについて
バイブルとは何か。本来の意味はキリスト教における「聖書」という聖典そのものであるが、現代においてその意味は拡張され、各個人が聖典とするもの、即ち各個人にとって特に親和性の高く、右に置くべきものであると認められた作品に対する呼称として、広く適用されている。例えばある者にとってのバイブルが『ジョジョ』であり、私にとってのバイブルが『ハーモニー』であるかのように。この意味では、各個人がそれぞれの宗教を持っている、と解釈しても良いのかもしれない。
しかし、何かの作品を「バイブル」として認定することに、何らかの違和感を覚える者も居るであろう。なんとなく、僭越であるような、あるいは傲慢であるような、あるいは痛々しい仕草であるような。そのような歯がゆさを、我々は「バイブル」という言葉に覚えるのではないか。例えば漫画を「これは私のバイブルです」と紹介するのに、口が素直に開く者は、いったいどれほどいようか。
しかし考えてもみたい。西洋人は、それぞれ必ず「バイブル」を持っている。西洋人が持っていて、我々が持ってはならないという理由はどこにもない。キリスト教徒に「バイブル」を保有する権利が与えられているのに、我々に与えられていないのは何だかずるいような感覚さえ抱く。だから我々は恥ずかしがること無く、バイブルを抱くべきなのだ。