2022.12.11
なんやえらい閲覧数伸びてますね。謝謝。
-
ウルフの行動に関する新発見
連日『バッドガイズ』のことで恐縮ですが、冒頭部分を繰り返し眺めていたらまた一つ気づきを得てしまったので。
ミスター・ウルフが他のメンバーより格段に強く「人々に受け入れてほしい」という願いを持っている、ということはこれまで散々述べてきました。今日はそもそも彼は「人々と自分には根本的に変わりがない」と思っていたのではないかという新説を、二つばかり新しく発見した彼の行動を軸に述べていきたいと思います。
まず、新しく発見した彼の行動について。
一つ目。冒頭のダイナーにおいて、スネークが一般人を脅して遊んでいたとき。そのときウルフは最終的に「こいつデカフェしないとな」的なキザな台詞を一般人に対して放っていますが、その前にはスネークの方を見て、やれやれ、という様子で首を振り、ちょっと何かを考えるように脇に目線を逸らしています。
二つ目。冒頭のカーチェイスシーンで、配達員がケーキを持ってきたとき。ウルフはそのとき、配達員に何かを言っています。口の動きからして、その言葉とは明らかに ’Thank you.’ です。
この二つから少なくとも、ウルフはスネークと違って一般人を脅して遊ぶのは良しとせず、どのような状況でもしっかりと感謝は伝える。そういう価値観を抱いていることが分かります。
-
ウルフは「悪役」に成りきれなかった?
さて、ここで疑問が一つ。ウルフは一般人に現に恐れられています。仮に一般人を礼儀正しくしたとして、ウルフの印象が良くなることは有り得ない。それでもウルフは一般人を脅すこともなく、また感謝を欠かすこともない。それは何故?
彼が元来素直で優しい性格の持ち主だから。では、説明不足でしょう。スネークは歪んでしまっていますから。クールでキザな性格の表れ、というのも少し離れているようにも思えます。クールでキザな性格と一般人への感謝は繋がりません。では、どうして?
説明が無いので何かを導出することも出来ませんが、たぶん、まだ自分が彼らと異なる存在であるということを認められていないのだと思います。
スネークは自分が「怪物」であることを明白に認識しているので、人々を脅すというそれに相応しい行動をしている。しかしウルフはそう思えていない。今は悪党であっても、本当は彼らと同じだ、と思っている。だからこそ、日常生活でも「悪役」に成りきれない。
-
ウルフは自分のことを「悪役」だと思っていなかった?
そう考えれば、収監シーンでウルフがスネークに「じゃあなんで無実の罪で収監されたんだ?」と指摘され、初めて何かに気づいたような表情をしたのも頷けます。
「俺たちは愛されていた」とメンバーを説き伏せるウルフに、スネークはこう指摘します。「俺たちは無実の罪で収監されている」「この世には怖がる側と怖がられる側が居る」と。そしてウルフはそれを聞いて、初めて何かに気づきます。
さて、ウルフの気づいたことは何でしょうか。恐らく「自分たちは愛されていなかった」ということ、ではありません。実際、あの場面でウルフたちは愛されていた。彼の気づいたことはそこではなくて、むしろ「怖がる側の人々と違って、俺たちは怖がられる側である」ということ。
しかしおかしいですよね。彼らが中身ではなく見た目で判断されていることは、我々観客からすれば明らかです。最初から何度もその描写がありますから。ウルフが少しでもそう思っていたら、あの場面でハッとさせられたような顔をするのは不自然です。ではどうして?
たぶん、彼は最初から気づいていなかったのです。自分たちは怖がられる他に選択肢が無い、という現実に。自分は結局人々からしてみれば「悪役」でしかない、という現実に。自分たちが変わっても人々は自分たちの見方を変えてくれない、という現実に。
だから単にグッドガイになって中身が変われば、多かれ少なかれ人々に受け入れられると思い込み、スネークに現実を突きつけられるまで、それを疑うこともなかった。
-
考えすぎ……かな?
なんてね。嘘です。考えすぎだよ。
だって彼は「俺たち童話じゃ悪党だし」と言い切っています。自分が多かれ少なかれ「悪役」であることは認識していることだと思われます。あの場面でハッとさせられたのも、すっかり熱に浮かれて忘れてしまっていただけでしょう。
あれ、でもそういえば、彼は「童話じゃ悪党だ」としか言っていなかったような?
どうなんでしょう。「俺たち人気じゃない」とも言っていましたしね。
-
余談:ウルフの会計の真意とは?
ところで、会計をウルフが毎回しているのも、スネークが強いているというより、ウルフの「一般人のように払いたい」という願望が先走っているのかもしれません。実際、従業員が完全に怯えてしまっている状況からして、払わなくとも何の問題も無さそうですからね。無銭飲食など、彼らの罪からすれば微々たるものでしょうし。
あるいは、これもまた「私情を挟まない」ということなのでしょうか。果たして。