2023.04.10(残265日)
- 耳鳴り
耳鳴りがする。ひどい耳鳴りだ。私の耳元で誰かがガラスの窓を引っ掻いているような気さえする。ひどい耳鳴りだ。
そういえば、耳鳴りというものは脳が無音を捉えて音を補完してしまうことによって生ずる現象であるらしい。なんとも私の脳は器量の狭いことであろうか。無音は無音、即ち静寂であるからこそ良いのであって、それを他の音、しかもこんな冷たい音で補完してしまっては、夜の儚さが台無しではないか。
そうだ。私はかつて星を見ていた。星を見ていたときも、こんな耳鳴りが私の夜に邪魔をした。音がするように星々が輝いている、と人々は云うが、私に言わせてみれば、あれは音がするように、ではなくて、ほんとうに音がしているのだ。騒音の中に響くシャッターが、私の夜であった。
今の世の中、みんなこんなだ。要らないもので埋め合わせる。料理など、その最たる例だ。食事とは何か。食事とは味である。味が良ければ見た目は実直なもので構わないのである。今の時代は違う。料理に彩りを求めている。写真を喰って彼らは生きられるらしい。令和の世になってやっと、仙人は初めて顕現したわけだ。
あるいは私が耳鳴りなのであろうか?
最近、そんなことばかり考える。馬鹿馬鹿しいことであるが、私はまだまだ若輩者であるらしい。