まどどブログ

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2023.05.21(残224日) 好きな作品について⑨ / 『自省録』

2023.05.21(残224日)

 

 五月も既に31日の中の21日。141日の経過。残り224日。あなかしこ。

 

 

  • 克己の聖書、そして賢帝のなやみ

 自省録。私はこれを、克己の聖書であると認めている。宇宙に対峙する存在として自らを見出し、外界をすべて取るに足らないものと断じ、その上で自らの中に至高を——安穏の地を求めるという彼の言説は、その正しさにかんする問題は別としても、極めて素朴かつ明快であり、茫漠たる自己の中で彷徨う我々に道を与えることは疑うべくもない。

 そしておそらく、その道を誰よりも求めていたのは、他でもない、作者自身であろう。五賢帝最後の皇帝。帝国の名君と名高い彼は同時に、内向的な哲人であった。誰よりも閑寂を愛した彼は、誰よりも怱忙の只中に在った。この対立を、彼は調和させなければならなかった。その調和への比類なき渇求が、この書物を創造せしめた。他者の死に対する悲嘆、宮廷生活への不満、こういった人間として、いや生物として誰しも持たれるべき自己保全の感情を、彼は捨て去るわけでもなく、また屈するわけでもなく、哲人として調和を試みることによって、彼は名主であり続けた。その彼の思惟の果てを我々は滴る水のように、伝えているのだ。