2023.05.28(残217日)
五月、31日のうち28日の経過。残り3日。9.7%。
一年、365日のうち148日の経過。残り217日。59.5%。
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現実は侵食され、我々は「ともだち」の、ケンヂの、あるいは——
宗教。科学。国家。宇宙。これほど大きな規模において展開された動乱がすべて、子供時代のたった一つの悪行によって引き起こされた。ストーリーの広がっていく作品こそ多かれ、宇宙からワッペン一つにまで収斂していくものは、この漫画のほかにおいて殆ど見られないのではないだろうか。
それが『20世紀少年』であると、私は思う。幼少期の、ほんの遊びに世界のすべてを仮託する。しかしそのどこにも教条的な——黒澤明のような説教くささはなくて、ただ自然に、それぞれの人物がそれぞれの思考によって行動した一つの結果として、この奇想天外な物語は示されている。
生きている。私は個々の人間が活き活きと活動している作品を好むのであるが、この作品は他のあらゆるものを越えて、生きている。その生存に、一切の疑いが持たれない。UFOの飛び交う狂気の世界であり、おとぎ話に過ぎないものであるように思わせておきながら、しかし、それは現実として読者の目に映る。あたかもドキュメンタリーを眺めているかのような錯覚を、読者に与える。そういう力を帯びている。
それだけではない——この作品は、思うに、読者の現実に侵食する。源氏物語やタイタニックのような、一つの現実として完結しているに留まらない。この作品は我々にも「ともだち」を感じさせる。我々をも「ともだちワールド」へと誘う。そしてケンヂの歌。
そうだ。現実を侵食する。我々そのものを変えてしまう。これが随一の傑作——『20世紀少年』であると、私は評価する。